何で誰も容易に変更できる「憲法解釈」をもとにした政策決定はおかしいって言わないの?
先日、「詰め込み教育で学んだことも役に立つんです!」ということの説明の一貫として、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の安倍総理の発言に違和感を持つべきことを指摘してみました(※1)。
しかし、その後、ニュースをこまめにチェックしていましたが、「憲法解釈」が持つ問題についてはあまり言及されていません。
「憲法解釈」によってある法案が「違憲でない」ことを手続きとして認めてしまっては、もしかしたら、基本的人権に制約をかけるような法案が憲法解釈の名の下、国民が関与できないまま国会を通過してしまう事態だって発生しかねないのでは!?
と思うのは私だけでしょうか。
「私の考え方って間違ってる?」
前回の記事を書いてから、急に心配になってきました。
【法律・政策は誰が決めているのか?】
昨年成立した特定秘密保護法は、「それって本当に必要なの?」という世論の疑問をよそに、国会を通過・成立しました。
また、TPPへの参加を巡っては、経済界と農水界で意見が割れていましたが、いつの間にか参加表明をすることに決まっていました。
何でこうなったのでしょう?
法律や政策は一体誰が決めているのでしょうか?
法律については、立法機関である国会に決定権があるはずです。
しかし、採決前には与野党間で調整が行われていて、「決定権がある」とは言えません。
それでは、「党」に決定権があるのでしょうか。
野党の集散離合からもわかるとおり、「党」とは「世間」と同じくらい実体のない存在です。
では、議員が決めているのでしょうか。
一人反対票を投じた横粂さんは…今どうしているのでしょう。。
総理大臣は、ある政策に対し、強い意向を示すことはできますが、永田町や霞ヶ関が反対をすれば、小泉元総理のように選挙に出るしかありません。
各省の大臣は、あんなに頻繁に交代している状況から、おそらく強行突破は無理だと推察されます。
では、官僚はどうかといえば、元官僚の中野氏によると、在職中に、「自分たちが主導をして政策をつくっている」、「思い通りに国を動かしている」という実感はほとんどなかったそうです(※2)。
それでは、経済界などの有力者が決めているのでしょうか。
特定の業界に有利な省令などがあることから、一定の影響力があるとは言えるとしても、「一定」に止まると思います。
【法律・政策の決定はブラックボックスの中】
中野氏によると、政策形成過程には、議員や関係団体、世論などさまざまなアクターが関わっていて、そこでの利害調整があるそうです。
その結果、多くの場合、「玉虫色」の結論に落ち着いているのだろうと思われます。
だとしたら…
- 特定秘密保護法のアクターは誰(何)で、どう玉虫色にした結果、法案成立に至ったのでしょうか?
- TPPの「玉虫色」の加減は、どこで誰がどう決めたのでしょうか?
結局、法律・政策の決定はブラックボックスに入れられてしまっています。
これが、日本の政治の実際です。
【法律の根拠が「憲法解釈」であっていいの?】
現在、政府・自民党がやろうとしている集団的自衛権の行使は、これまでの憲法解釈では違憲であると認識されていました。
最近の世界情勢の変化などを鑑みると、日本も集団的自衛権を行使せざるを得ないという主張は一理あると思います。
ただ、それを政府が与党と協力をして「あるべき解釈」をつくり閣議決定をする。
そして、それを根拠に国会に法案を提出し、ブラックボックスの中で可決する、という手続きで本当にいいのでしょうか。
「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」では、「これまでも憲法解釈で対応してきたのだからこれからもいい」と言っていますが…(※3)
きちんとした手続きに則り議論をした上での結論だから、国民はそれに従うのではないでしょうか?
解釈を変更することで何でもできるのなら、「憲法」って何なのでしょうか?
「憲法解釈」がもつ問題について、あまり話題になっていませんが、大問題に思える私の認識が間違っているのでしょうか?
誰か教えてください。
※1詰め込み教育の何が悪い?~詰め込み教育だって、役に立ちます! - 東京大学を卒業しましたが、
※2「政治主導はなぜ失敗するのか」を読みました。 - 東京大学を卒業しましたが、