「人工知能は人間を超えるか」を読みました。
【評価】
とても良い。
【関心】
今年に入ってから、たまたまかもしれませんが、新聞やニュース、職場などいろいろなところで人工知能に関する話を聞く機会がありました。
人工知能については、これまであまり関心がなかったのですが、どうやら、最近人工知能研究が「熱い」らしいことがわかりました。
「流行に乗りたい」と思ったわけではありませんが、「私も少しくらいかじっておこうかな」と思い、人工知能関係の本を読んでみることにしました。
「人工知能」で本を検索したところ、以前、「人工知能倫理委員会が倫理指針をまとめた」という新聞記事に委員長として名前が掲載されていた松尾先生の本が見つかったので、とりあえず読んでみることにしました。
【感想】
とてもおもしろかったです。
人工知能について、まったく知識はありませんでしたが、
- 人工知能研究の歴史― 各段階における中核技術や課題、問題点 ―
- 長年の研究の中での一番の壁だった「特徴表現の獲得」問題とそのブレイクスルーになりそうなディープラーニング技術の開発、その説明
- 今後の研究・技術進展の見込みと社会での活用のされ方、産業への影響
- 人工知能研究における日本の状況・世界から見た立ち位置
- 巷の言説に対する見解 etc
人工知能の「全て」がわかりやすくコンパクトに説明されていたと思います。
以下、工学、というかPC関係も統計もあまりわかっていない私のつたない認識ではありますが。
どうやら最近のAI(=ディープラーニング技術)では、PCを使って大量のデータを処理し、その中で合成変数をつくったりしながらとても精度の高い予測を行うことができるようです。
ネコの画像を提示して、「ネコ」と判断することも統計的な予測にもとづくものと理解しています。
ある従属変数を説明するのに、人間が分析をする場合は説明変数を何らかの予測に基づいて指定・投入しますが、今の技術だと、大量のデータ(使えるものすべて?)をPCがゴリゴリ分析をしてくれて人間だったら説明変数として考えることのない(よって、投入しない)、でも従属変数と関係のある説明変数を見つけてきてくれるということだと理解しています。
とりあえず、ものすごい力技だと思います。
という程度の理解しかできませんでしたが、読んでいてとてもおもしろかったです。
「人工知能」という言葉を聞いて思い浮かべるものは「ディープラーニング」から「ドラえもん」まで人によってさまざまだと思います。
著者も同趣旨の指摘をしていましたが、そもそも「人工知能」が何を指すのかによってそれが実現されているのか、近いうちに実現されそうなのか、現時点では実現の見込みはないのかといったことは違うそうです。
私が一番期待している「ドラえもん」は、著者によると今の技術ではできないそうです。
残念。。。
一方で、AIを含め新しい技術には、それが何であれいつの時代も不安がつきまとうものだと思います。
だからこそ、「人工知能」という言葉の定義や今の技術、そして、今後の可能性についてきちんとした情報が発信されていくことを期待したいと思うとともに、浅薄な言説に振り回されない見識を身につけたいと思いました。
とはいっても、AIが実用化されれば私のような事務系の仕事は一定部分なくなってしまうことは間違いないと思うので…
うーん、どうしたものでしょう。。
(そのあたりについても、本書にはとても深い指摘がありました。)
また、上から目線な発言となってしまい恐縮ですが、
本書を読むと、著者はAI研究に夢と期待を抱いていることが伝わりつつもでも、妄信的になるのではなく冷静に現実を見据えていて、加えて、「研究」という狭い世界にとらわれず社会への視野も持っていらっしゃる方だと思います。
個人的に、とても素敵な方だと感じました。
そんな著者の魅力も私にとっては本書の「良さ」の一部でした。
本書は、人工知能に関する知識のない人でも分かりやすく読め、人工知能を取り巻く「全て」がわかるとても良い本だと思います。
人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの (角川EPUB選書)
- 作者: 松尾豊
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/中経出版
- 発売日: 2015/03/11
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