「歴史学ってなんだ?」を読みました。
【評価】
物足りない。
【関心】
子どものころ、本を読むことが好きでした。
高校生のころ、日本史の授業や勉強が好きでした。
しかし、本を読むことも日本史を学ぶことも「何か意味があるの?」と問われると、正直なところ答えに窮してしまいます。
たまに、「これから先の人生、読書ばかりに時間を費やしてしまったとしたら…。それでいいのかな?」と、漠然とした不安に襲われます。
それはそれでいい人生な気もしますが。
そんな私のもやもや感に何か答えを与えてくれそうなタイトルの本書を見つけたので、読んでみることにしました。
【感想】
本書は、歴史小説家と歴史家を比較することなどを通して、歴史学の意義を考えていくという内容になっています。
しかし、本書を読む限り、「歴史小説家が少し頑張ったら、歴史家くらいには、検証ができるのでは?だとしたら、公的研究費を使って研究をする必要はないのでは?」という感じが否めませんでした。
そうすると、税収が落ち込む昨今、もしも、当該研究の必要性の説明がきちんとできない学問分野への公的研究費が削減されるとしたら、歴史学は相当早い段階で削減の対象になってしまう気がしてしまいます。
歴史は好きなので…
本書を読みながら、「学者なんだからもっとがんばってよ!」と思ってしまいました。
もっと合理的かつ説得力のある歴史学の意義の説明をしてもらいたかったです。
しかしながら、歴史学については、「社会の役に立つ」ことに重点を置きすぎると、皇国史観のように過度に時流に迎合してしまったり、時流に合うような解釈をしてしまいがちになってしまうという問題があるようです。
学問の意義(「社会において役に立つ」を含む)と中立性や正しさ、公費投入の関係は非常に難しいと改めて思いました。
この点について、自分のまとまった考えを示せるほど考えが深められてはいないので、引き続き、考えていきたいと思います。
でも…
大学で研究をしているわけでも、予算配分権を持っているわけでもない私が考える必要はないことなのかもしれません。
上述のとおり、本書については物足りなさなどいろいろと思うところがあったのですが、下記の点に一番疑問を感じました。
歴史学は、史料批判を行ったり、解釈をして歴史像を提示したりするなど、実験や観察に比べると研究者の恣意性が高くなりやすい学問だと思います。
それ故に、どのように史料批判を行うのか、恣意的にならないための心構えなどは非常に重要だと私は思います。
しかし、この点について本書では、「その(=史料批判)具体的な手順や、史料批判をする際に心がけなければならないポイントについては、歴史家以外の人にとってはあまり大切でないと思うので、ここでは論じません。」とされています。
本書は素人を対象とした歴史学入門書という扱いだそうですが、昨今の研究不正問題ではありませんが、研究の質を担保する重要な点を初心者に向けて説明しないという著者の姿勢には大きな疑問を感じてしまいました。
このような疑問を感じるのは私だけでしょうか?
そして、私のこのような疑問は感じる必要のないものなのでしょうか?
以前読んだ『歴史を学ぶということ』(※1)もいまいちな内容でしたが…
次こそ、歴史学の意義についてもっと踏み込んだ議論をしている本を読みたいと思います。
※1「歴史を学ぶということ」を読みました。 - 東京大学を卒業しましたが、