東京大学を卒業しましたが、

東京大学を卒業したけれど、「何者」にもなれず社会の中に埋もれきったアラサー女子の、現状への反省も込めた徒然記です。

過去のデータに基づく学問と政策における撤退戦略の必要性について

先日読んだ「公共事業が日本を救う」(※1)。
非常におもしろかったのですが、「第8章日本が財政破綻しない理由」についてだけはどうしても違和感を拭えませんでした。

その違和感の原因について改めて考えてみました。


【経済は予想できるもの?】

「第8章日本が財政破綻しない理由」には、ざっくりまとめると以下の内容が書かれています。

 日本の財政赤字については、「このままでは日本もギリシャのように破綻してしまう」という趣旨の報道がなされている。
 しかし、日本政府の借金は多いが企業や家計など「日本全体」の資産を考えてみると、むしろ黒字の上、ほとんどが内債。
 よって、デフレ下では、過去にその効果が認められているケインズ主義にしたがって、政府が国債を発行して公共事業を行い国内の需要を喚起すべき。
(認識違いがあったら、ごめんなさい)


うーん…


日本政府が破綻するのかしないのか、現状、公共事業を行うことに効果があるのかないのかについては、経済に関する知識が十分でない私には正直よくわかりません。
やはり、専門家の方にしっかり検討していただくしかないのだと思います。


しかしながら、素朴な疑問があります。

専門家が考えれば「正解」は出せるのでしょうか?


2014年7月~9月期のGDPは事前の民間予測を「予想外」に下回ったそうです(※2)。

 


【過去のデータに基づく学問はいつまで「真」と言える?】

「社会/自然科学」は、過去のデータを分析してそこから理論を構築し、その理論を「現実」に当てはめる学問と言えると思います。

つまり、経済学は「過去」に基づく理論と言えます。
(例外もあると思いますが)


このように経済学を捉えると、「過去のデータでは真」であった理論が未来においても「真」であると言えるのだろうか、という疑問がわいてきます。


自然科学では、理論が構築された時と対象の状況や事情が変わることはあまりないと考えられるので、普遍性が高い理論だと思います。
しかし、社会科学については、それほど普遍性が高くない可能性があるのではないでしょうか。


例えば、世界恐慌時に行われた、ケインズ主義に基づいたニューディール政策には効果があったと言われています。
しかし、当該政策が実施された当時は各国が保護主義を強めた時代であり、一方で、現在は、自由貿易が中心となっています。
これだけ経済を取り巻く状況が異なっている状況下での公共事業にも、世界恐慌時と同じように「効果がある」と考えることは適切なのでしょうか。

加えて、「先行きが不透明な社会」についてはどう考慮している、あるいは考慮しなくていいのでしょうか。
リーマンショックが起こったのは想定外だった」と言えばいい、ということなのでしょうか。


このような感覚的な疑問は、私の知識不足故なのかもしれません。
しかし、理論の前提や条件まで考慮した上で論じている著作はあまり見かけたことがない気がします…
(藤井氏は若干言及していましたが)

 


【政策には撤退戦略が必要ではないのか】

このように考えると、経済を含む各種政策には、思うような効果が出なかった=失敗した時の対処方策を含む「撤退戦略」が必要なのではないかと思います。


先の衆議院選挙に際し、安倍首相は平成29年4月の増税について「確実に実施」すると言っていました(※3)。
しかし、増税をした結果、経済がのっぴきならない状況になったらどうするのでしょう?

 

しかし、実際のところ、「撤退戦略」を伴った政策というものは聞いたことがありません。


なぜなのでしょうか?


私自身は、「完璧な政策」など存在しないと思っているので、撤退戦略を予め考えておいた方が日本社会のためになるのではないかと思いますが、多くの人はそうは考えないということでしょうか。


私にはとても不思議に思えます。


私のこのような考え方は、知識不足や世の中の常識・暗黙のルールを理解できていないがためのトンチンカンなものなのかもしれません。
でも、考えてみたらおもしろい気がするので、もう少し考えてみたいと思います。

 

 

※1「公共事業が日本を救う」を読みました。 - 東京大学を卒業しましたが、

※2GDP、予想外の1.6%減 首相、消費増税延期表明へ:朝日新聞デジタル

※3平成26年11月18日 安倍内閣総理大臣記者会見 | 平成26年 | 総理の演説・記者会見など | 記者会見 | 首相官邸ホームページ