東京大学を卒業しましたが、

東京大学を卒業したけれど、「何者」にもなれず社会の中に埋もれきったアラサー女子の、現状への反省も込めた徒然記です。

東大生的発想?大学のグローバル化政策について。

今さらですが、昨年10月初めに発表されたTimes Higher Educationの世界大学ランキング2014-2015(※1)についてです。

同ランキングによると、東京大学は23位だそうです。
この順位がいいのか悪いのか、私にはよくわかりません。


【大学ランキングの評価基準と文部科学省の政策】

同ランキングは以下の5つのカテゴリー・13評価基準で順位付けが行われているそうです(※2)。
①教育
②研究
③論文被引用
④産業界からの収入
⑤国際性


ちなみに、日本再興戦略では、「今後10年間で世界大学ランキングトップ100」に日本の大学が「10校以上入ることを目指す」とされています(※3)。


昨年9月末、文部科学省がスーパーグローバル大学の採択結果を発表しました。
「スーパーグローバル大学創生支援」とは、「『大学改革』と『国際化』を断行し、国際通用性、ひいては国際競争力の強化に取り組む大学の教育環境の整備支援を目的」(※4)とする事業だそうです。
事業の採択に当たって、文部科学大臣は会見で「10年後には、採択大学全体で、例えば、外国人教員等の比率を約半数に、外国語における授業科目比率は5分の1とする目標」を掲げていると述べていました(※5)。


世界大学ランキングの評価基準を鑑みるに、本事業は同ランキングを上げるための事業のように思えます。

大学受験のとき、模試の結果を見て「日本史は勉強すればあと○点くらいは上げられそうだから…」と考えていたことを思い出しました。

 

【今の大学のグローバル化政策を進めた先に…?】

試験対策をして成績を上げるように、世界大学ランキングの評価基準に沿った大学改革を実施し、ランキングの順位を上げたとして、日本の大学は何が良くなるのでしょうか?


外国人教員を確保する際、優秀な教員が確保できれば今より教育レベルが上がり、学生にとって魅力となることが考えられます。
しかし、外国人教員はいつか母国に帰ってしまうことが予想されます。

加えて、外国人教員を増やすということは、当然ながら日本人大学教員とのポストの争いが生じ、ひいては、ポスドク問題を悪化させることが予想されます。


英語の授業が増えたら、日本語を学ぶ負担が減るので留学生が増えるかもしれません。
優秀な留学生と一緒に学ぶ機会が日本人学生に提供されることは、望ましいと言えます。
ところで、日本に来た留学生は、母国に帰って就職してしまうのでしょうか…?
日本で就職をするのであれば、日本人学生と新卒正社員のイスの奪い合いが始まります…

 

現在の国際状況を鑑みるに、日本の大学の国際化の必要性については、納得できます。
しかし、今の政策には何だかな…と思ってしまいます。

 

ちなみに、今と同じように「世界の流れに乗らなければ!」という雰囲気があったと思われる明治初期、福沢諭吉は「学問のすゝめで」以下のように言っています。

「いま、我が国で雇った外国人は、わが国の学者が未熟であるがゆえに、しばらくその代わりをつとめているのである」(※6)

また、同時期、フランスの保護国となっていたベトナムでは、近代化を担う人材を育成するため、明治維新を成し遂げ日露戦争にも勝った日本に大勢の留学生を送る東遊運動を展開しました(※7)。



現在進められている大学の国際化は、頭脳循環に加わることが目的のはずなので、明治維新の頃と事情が異なるとは思いますが…

「学ぶべきもの」を確立することが国際化のための適切な手段ではないかと個人的には思います。

 

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現在の大学のグローバル化政策はとっても東大生らしい発想だな、と思ってしまいました。
ランキングの順位を上げる≒模試の順位を上げる≒テストの点数を上げる。

大学に入った後は勉強をしない東大生ではないですが、日本の大学が「ランキングは高いけど学ぶべきものはない大学」にならないことを祈ります。

 

 

※1東大が世界23位 日本勢は後退(2014年10月2日(木)掲載) - Yahoo!ニュース

※2JSPS資料
  http://www.jsps.go.jp/j-kaigai_center/data/news/2013/uk_20131003.pdf

  今年度の基準にも変更がないものとして記事を書いております。
  変更があった際には、ご容赦いただきますようお願いいたします。

※3決定等 - 日本経済再生本部
  「平成25年6月14日 日本再興戦略 -JAPAN is BACK-(日本語)」 P.17参照

※4スーパーグローバル大学創成支援|日本学術振興会

※5下村博文文部科学大臣記者会見録(平成26年9月26日):文部科学省

※6「学問のすすめ 現代語訳」を読みました。 - 東京大学を卒業しましたが、

※7「物語 ヴェトナムの歴史」を読みました。 - 東京大学を卒業しましたが、