「金融大崩壊」を読みました。
【評価】
良い。
【関心】
しばらく、宗教関係の本ばかり読んでいたような気がしました。
「たまには違う分野の本が読みたい、久しぶりに経済関係の本がいい!」と思い、何を読もうか考えたところ、以前読でおもしろかった『資本主義の終焉と歴史の危機』(※1)の著者・水野氏の著書を読みたいと思いました。
水野氏の著書で検索したところ出てきた本書の、「『アメリカ金融帝国』の終焉」というおどろおどろしい副題に興味を持ち、読んでみることにしました。
【感想】
本書によると「アメリカ金融帝国」とは、以下のものを指しているそうです。
95年に就任した米・財務長官が「強いドル政策」に方向転換をした結果、アメリカは世界中から資金を集め、それを再び世界へと配分していく「アメリカ投資銀行株式会社」=「アメリカ金融帝国」となった。
アメリカが金融の中心だというイメージは子どものころから漠然と持っていましたが、本書を読むことで、「なぜ、どのような意味でアメリカが金融の中心なのか」ということが「ようやく」わかりました。
「何でアメリカが金融の中心なの?」とは、今さら恥ずかしくてヒトには聞けません…
今さらでもわかってよかったです。
しかし、自分も含め上記問いに対してきちんと答えられる大人は案外少ない気がします。
本書では、資本主義の成立から「アメリカ金融帝国」の成立・終焉までの大まかな「歴史」、そして、「アメリカ金融帝国」終焉のきっかけとなったリーマン・ショックについて非常にわかりやすく説明されています。
リーマン・ショックの概略については、以前別の本で読んだことがあったので知っているつもりでいましたが、サブプライムローン問題が、「資本主義の成立以来、400年間続いた資本と国家と国民の三位一体の関係」を崩していたという歴史上の意味などを知ることができ、これまでの理解が浅かったことがわかりました。
宗教関係の本を読んだときにも思いましたが、「聞いたことがある」と「知っている」・「わかっている」。
何を基準に判断をすればいいのか、非常に難しいと思います。。
そして、日本語として引っかかることがないと、「わかったつもり」になってしまうことが多い気がします。
そう考えてみると…
上記で「サブプライムローン問題には資本と国家と国民の三位一体の関係の崩壊させたという意味があった」とさらりと書いてしまいましたが、よくよく考えてみると「資本と国家と国民の三位一体の関係の崩壊」とはどのようなことを指しているのか、よくわかっていない気がしてきました…
「資本と国家と国民の三位一体の関係」とは、かつては、「企業が利益を上げると、国家の財政が潤い、そして、福祉の充実などにより国民生活が豊かになっていたことを指す」ということはわかっています。
では、その「崩壊」とは…?
- 企業が利益を上げても、法人税率が変わらなければ資本と国家の関係は変わらない?
- 政府が福祉政策から新自由主義政策に政策転換をしたから国家と国民の関係は崩れている??
- そして、その「崩壊」にサブプライムローンがどう関係した…?
企業と国家の関係については、『資本主義の終焉と歴史の危機』(※1)あるいは『国力とは何か』(※2)に書いてあったような…???
読書はいつも真面目にしているし、内容についてもそれなりにわかっているつもりでいましたが、改めて考えてみると曖昧な理解をして「わかったつもり」になっていることが多いのかもしれません。
せっかく本を読んだからには、そこで得た知識は自由に出し入れできる「もの」にしたいと思っているので…
そのためにも、本で得た知識をもとに記事を書くなど、きちんとアウトプットをしていきたいと思います。
反省です。
ちなみに、以前「経済学(=社会科学)は過去のデータに基づく学問だからいつまでも正しいとは言えないのではないか」(※3)という趣旨の記事を書きましたが、本書によると「1968年以降、そして特に95年以降、経済の常識(=下記参照)は次々に覆されて」きたそうです。
- 金融経済は実物経済に従属する
- インフレはすべての怪我を癒す
- 貯蓄率が高い国ほど成長率が高い
私の妄想も全くの的外れではなかったようです。
本書は非常におもしろく、学ぶことの多い良書だと思います。
※1「資本主義の終焉と歴史の危機」を読みました。 - 東京大学を卒業しましたが、
※2「国力とは何か」を読みました。 - 東京大学を卒業しましたが、
※3過去のデータに基づく学問と政策における撤退戦略の必要性について - 東京大学を卒業しましたが、