提供される商品に甘えた自己学習→ビジネスに踊らされる私たち?
以前、東洋経済オンラインを見ていたら、「期待の新人『5年経ったらタダの人』のワケ」(※1)という記事を見つけました。
最初から「タダの人」ですが、思わずドキッとしてしまいました。
しかも、この記事の最後の方には、「今日までの自分では通用しない明日が来る可能性は大いにあります。その中で最も大切なことは、自ら全力で能力開発をし続け、進化し続けることです。」(※1)と書かれています。
以前書いたとおり、「これは過剰に不安を煽っているに違いない」(※2)と思うものの、それでも全く気にせずに流せるわけでもないので困ります。
【自己学習、成果は上がっている?】
社会人をやっていると「何かした方がいいのかもしれない」と思うことがあると思います。
(ここでは「自己学習」とします)
そう思ったとき、世の中の方々は一体何をされているのでしょうか?
すぐに思いつくこととして、以下のものが挙げられると思います。
- ビジネス書など仕事に役立ちそうな本を読む
- 資格取得を目指す
- ビジネススクールなどに通う
このような自己学習に関連して、「専門性を磨いても、職場では活躍できない?」(※3)という記事を見つけました。
この記事では、「より専門性の高い仕事が出来るようになった」と感じる20代後半の社会人が多いという調査結果に対し、「20代後半の社員たちに専門性の進歩を感じない」という40代からの厳しい意見が紹介されています。
【提供される商品に甘えた自己学習→ビジネスに踊らされる私たち?】
先日、「私たちは雇用不安を煽る言説に不必要に走らされているのではないか」という趣旨の記事(※2)を書きました。
それについて、もう少し考えてみたのですが、私たちは、その真偽/要不要のわからない雇用不安に関する言説に不安を煽られ、その結果、ビジネス書・資格市場に踊らされている部分があるのではないかと思います。
自己学習をした方がいいのではないかと思うきっかけは、雇用不安を煽る言説や周りの行動に触発された「漠然とした不安」であることが多いと思います。
このような不安は「何をすべき」という具体的な指針を持たないため、多くの人は「何となく良さそう」に思える書店で目立つところにおかれているビジネス書を読んだり「みんなが取組んでいる」資格にチャレンジしたりするのではないでしょうか。
しかし、そもそも何が仕事の役に立つかは、その人とその仕事によります。
また、例えば、TOEICでそれなりの点数が取れたとしてもそれによって仕事の幅が広がるとは、少なくとも私には思えません(※4)。
ビジネス書を読んだり資格取得の勉強をするとき、「なぜ、その本を読む/資格を取得するのか」と真剣に考えた上で行動している人はどのくらいいらっしゃるのでしょう。
当たり前かもしれませんが、「現在の自分には○○が足りないから、△△をする」といった、根拠のある自己学習をしないと仕事での成長や専門性の進歩は望めないのだと思います。
つまり、私たちが行う自己学習の中には「何となく良さそう」ではあるけれど、自分の仕事においては役に立たないことも多く含まれている可能性があると考えられます。
少し話は変わりますが、苅谷氏は「教育改革の幻想」(※5)で受験競争という実態とは異なる「思い込み」に対する処方として行われた教育改革(=ゆとり教育)を批判しています。
社会人の自己学習にも似たような部分があるのかもしれません。
結局のところ、私たちは「自分には何が必要でどのような方法で習得すべきか」ということを自分で考えず、「商品(=本や資格など)」として与えられたものを無批判に取り入れているため、一部の「ビジネス」に踊らされてしまっているような気がします。
例えば、「期待の新人『5年経ったらタダの人』のワケ」(※1)で紹介されている「商品化」されてない自己学習については、実行している人は少ない気がします…
最近の子どもはサービス業に囲まれて甘やかされすぎだと思っていましたが(※6、7)、子どもばかりではないのかもしれません。
私も反省しなくては…
※1期待の新人「5年経ったらタダの人」のワケ | 27歳からのビジネス基礎力 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト
※2雇用不安を煽る言説に過剰に走らされている気がする。 - 東京大学を卒業しましたが、
※3専門性を磨いても、職場では活躍できない? | 高城幸司の会社の歩き方 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト
※4英語について徒然なるままに ~英語が話せないまま逃げ切りたい! - 東京大学を卒業しましたが、
※5「教育改革の幻想」を読みました。 - 東京大学を卒業しましたが、