東京大学を卒業しましたが、

東京大学を卒業したけれど、「何者」にもなれず社会の中に埋もれきったアラサー女子の、現状への反省も込めた徒然記です。

「日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?」を読みました。-日本企業の「おかしさ」とそれが「当たり前」な自分。

【評価】
普通。

 

【関心】
ここしばらく、「働くこと」について分野を限定せず、幅広く本を探しています(※1、※2)。

とあるとき、漠然と「働くことに関する本」をネットで検索していたところ、「エンゲージメント」に関する英語論文を見つけました。

PDFで全文が掲載されていたので冒頭を読んでみたのですが、英語が大嫌いな私には荷が重く…
しかしながら、「エンゲージメント」という概念はおもしろそうだと感じたので、「エンゲージメント」について日本語で書かれた本がないか探してみたところ本書が見つかりました。

本書でどこまで「エンゲージメント」が扱われているのかはわかりませんが、とりあえず、読んでみることにしました。

 

【感想】
本書を読んだ目的である「エンゲージメント」について、その大枠をつかむことはできたと思います。

ただ、それ以上に、日本企業での勤務経験のある外国人著者による「日本企業の人事管理・雇用慣行、働き方がおかしい!」という指摘が、日頃、それらに対して不満を抱いている私にとっては痛快で、「やっぱりそう見えるよね」と思えることが多く指摘されていて、おもしろかったです。
私が日頃仕事をする上で感じていた「違和感」や「おかしさ」「不満」を著者が一刀両断にしてくれていました。

加えて、著者は日本についての理解も深いようで、「地方転勤は参勤交代のよう」など、言い得て妙な指摘があったりと非常おもしろかったです。


しかしながら、読み進めるにしたがって、「日本企業はこうするべき」という提案が増え、それらは的外れではないのですが、日本企業的人事管理・雇用慣行、働き方に対して「現に」不満を抱いている一般社員にはどうすることもできないものが多く残念でした。
また、それらの提案がどこか教訓的な感じがして個人的にはあまり好きではありませんでした。


ところで。
本書は、いったい誰に向けて書かれたものなのでしょうか。

この手の本は、本当に改革が必要な組織のリーダー(=上層部、以下同じ)はあまり読まない気がします。
でも、改革案などの提案はリーダー向けの場合が多い印象です。

トップの考え方によって組織が変わるのは当然のことで、トップは変わらないけれど「変わった方がいい組織」を変える方法について言及してもらいたかったです。

 


一方で…
本書を読みながら、著者の日本企業的な働き方に対する批判に痛快さを感じつつも、自分がすっかり「日本的な働き方」に染まってしまっていることに気づかされました。


例えば、組織の中で何かを進めようとしたとき、根回しや調整は「必須の仕事」だと私は思っています。
しかし、「根回し」や「調整」という言葉の英語訳はないそうです。


また、著者から見ると日本企業の意思決定プロセスは時間がかかり、効率的ではないそうです。

言われてみれば、私も社会人になりたてのころ、組織の面倒な意思決定プロセスに辟易していたことが確かにありました。
しかし、今の私にとっては「根回し」も「調整」も当然の仕事のプロセスで、それを含めて「いかにうまく進めることができるか」が「仕事」だと思っています。

人間変わるもの、ということでしょうか…

気づかぬうちに、私は随分と日本企業的な仕事の仕方に染まってしまっていたようです…
本書を読んで、初めて気づきました…

そうすると、何だかんだ言って、私は「日本企業」で働くことが向いているのかもしれません。

「ダメ」なことではないはずですが、なぜか複雑な心境です…

 

本書を読むと、アメリカ企業と日本企業の仕事に対するスタンスや考え方の違いもよくわかります。
先ほど、「私は日本企業で働くことが向いているのかも」と言ってはみましたが、一方で、「『仕事』の定義が明確になっていて、そこにアプライして、付き合い残業はしなくてよくて成果主義」というアメリカ的な仕事のスタンスは好きです。

でも、アメリカ的な仕事の在り方は「安定」とのバーターである可能性を考えると…

うーん…

私は安定も手放したくはないな…


しかし、近年の日本における終身雇用制度の崩壊に関する指摘を鑑みるに、私たちは、実は「安定」を手にしていないにもかかわらず、かつて「安定」とのバーターとして提供させられていた日本企業的な人事管理や働き方などを受け入れさせられているのかもしれません。
これは言いすぎでしょうか?

本書を読んでいると、漠然と「企業ってなんだろう」という疑問がわいてきました。


本書は、日本人以外の視点から日本企業の人事管理や雇用慣行、働き方について知ることができる良い本だと思います。
ただ、後半はいまいちでした。

 

 

 

※1「モチベーション3.0」を読みました。 - 東京大学を卒業しましたが、

※2「9割がバイトでも最高のスタッフに育つ ディズニーの教え方」を読みました。-仕事と報酬とアルバイト。 - 東京大学を卒業しましたが、

 

 

日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?

日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?